第2章 避難生活
「サクラ、配給もらいに行こう」
アルミンに声を掛けられ、わたしはアルミンと配給の列に並ぶ。
配給の量は日を追うごとに少なくなっていた。
きっとこのままでは配給も底を尽きてしまうだろう。
避難民たちもきっと薄々感じ始めている。
「サクラはこれからどうするか考えてる?」
「うーん。」
「このまま一生避難生活ってわけにはいかないと思うからさ。僕は、2年後、エレンとミカサと同じく訓練兵に志願しようと思ってるんだ。」
アルミンの表情は決意に満ちていて、覚悟の強さが伝わる。
「そっか。私は……」
言葉に詰まった。
わたしは、もう二度と巨人なんて見たくない。
戦って勝てるなんて到底思えないし、ただただ怖いだけ。
でも、わたしも訓練兵に志願したら、みんなと離れなくて済む。ひとりにならなくていい。
わたしは巨人と戦う怖さより、ここでみんなと離れてひとりぼっちで生きていく方が、怖い―――
「わたしも……訓練兵に志願する。」
そう口にすると、アルミンは驚いたような表情を浮かべ、心配そうに私を見た。
「本当に良いの?」
その問いにわたしは、正直な気持ちを絞り出すように伝えた。
「みんなと離れてひとりぼっちになりたくないの。」
きっと、もう両親に会うことは叶わないだろう。
いつだってわたしに優しかったお母さん。
そんなお母さんを愛していたお父さん。
この生活は当たり前に続いていくものだと思っていた。
あぁ、来月産まれるはずだった赤ちゃんにも会いたかったな。
お姉ちゃんって、呼ばれてみたかった。
きっと、とっても可愛くて愛さずにはいられなかっただろうな。
涙が溢れてくる。
その隣でアルミンは、何も言わずただ悲しそうな表情でわたしを見つめていた。