第1章 これまで
何日経ったか、病院のベッドで目が覚めた私をおばさんが心配そうに覗き込んでいた。
あの後、白マントの人が急いで病院まで運んでくれて一命を取り留めたらしい。
結構危ない状態だったらしく、おばさんは心配で枕元を離れられなかったそうだ。
痛みと包帯に巻かれて思う様に体が動かなかったので、少しおばさんに甘えて面倒を見てもらうことにした。
白マントさんには、またお礼を言わないといけないな、そう思いながら眠たいのでもう一度目を閉じた。
それから1週間後、病院に怪人が現れることもなく、珍しく無事に退院した私は念願の自宅に戻ってきた。
おばさんに聞いた話では、バイト先はめちゃくちゃになってしまった為、私達は実質退職扱いになるそうだ。
新しい仕事を探すのに躍起になっているおばさんは何やら体力をつけたいとかで、ジムに通い始めたらしい。
そんな事を長々と話すおばさんを見ていて、守りたかった理由が分かった気がした。
ちょっと似てるんだな。
お母さんに。
そんな優しいおばさんは、また一緒の職場で働くことを提案してくれたが、私の体質上、一緒にいると同じことに巻き込み兼ねないのでお断りした。
いつか何も気にせず一緒にいられる世の中になったら。
きっとヒーロー達が作ってくれる。
あの人なら。
ひとりぼっちの自宅のベッドで明るい未来を夢見て、つかの間の休息を得た。