第3章 それから
飛び出したのはいいものの、その辺を宛もなく徘徊していればきっと怪人に出くわして更に困ることになる。
そこでヒーロー協会の近くにいれば少しは頭を冷やす時間が作れるだろうと思い、そちらに向かった。
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協会の近くにある花壇の縁に腰を下ろす。
今日は珍しく一体も怪人を見ることなく辿り着けた。
気温が暑く汗をかいたため道中の自販機で買った飲み物をコクコク飲んでいると、隣に誰かが座った。
「やぁ。」
飲み口から口を離しながら見ると、そこにはいつかの自転車マンがいた。
爽やかに笑う彼に口に含んだ飲み物を飲み込み、挨拶を返す。
「こんにちは。」
すると自転車マン、もとい無免ライダーさんは「こんにちは」と言葉を返しニコッと笑った。
そんな彼の腕を見て、痛々しく巻かれた包帯に気付く。
また怪我をしてしまったのか、と思うのと生身で怪人と戦う危険さを改めて理解して包帯を見つめていると
「今日はお仕事かい?」
と聞いてきた。
私はうーんと小さく唸ってから首を横に振る。
「ちょっとお酒で失敗してしまって…反省中です。」
目を伏せながらバツが悪そうに言うと、それを聞いた無免ライダーさんは大きく笑った。
「分かるよ、俺も失敗した事があるからね。」
遠くを見つめるように言った彼の顔をチラリと見て、視線を戻す。
THEヒーローの無免ライダーさんでもお酒で失敗することがあるんだなぁと思うと、少し親近感が湧く。
「俺の場合は取り返しのつかない事になってしまったが、君はどうだい?」
もう吹っ切れているのか、重い実情をサラッと言ってのける。
そんな彼のゴーグルの奥にある瞳を見つめて、すぐに目をそらした。
取り返しはつかないけど、どうだろうか。
私が恥ずかしがっているだけで2人は何とも思っていないかもしれない。
現にあの場で嫌いになっていないか確認して、なっていないと言っていたし……
思い出したらまた恥ずかしくなってきた
「私、感情をあまり表に出せないタイプでして…、お酒を飲んでタガが外れてしまったというか…。情けない話なんですが…大泣きしてしまって……」
ぽつりぽつり話し出すと自分語りが止まらなくなってきた。
「普段言わないことを思いっきり言ってしまったり…むず痒くなるようなことを平然と…」