第3章 それから
あの後、大袈裟なくらいに手首に包帯を巻いてくれるサイタマさんに代わってジェノス君が綺麗に巻き直してくれた。
包帯自体が大袈裟だと思ったのだが、手首に赤い跡を付けて歩けば周りがどう思うかを想像したら巻いてもらう他無かった。
無断欠勤になってしまったバイト先にはかなり心を決めて連絡したのたが、既に話は行っていたようで心配される事はあっても怒られることは無かった。
次の日3日ぶりに出勤した私を暖かく迎えてくれたのは良かったが、なぜか恋人は鬼サイボーグという少々面倒な話になっていたのはまた別の話。
誘拐事件が落ち着いてきた頃、サイタマさんがB級に昇格したというおめでたいニュースが入ってきて、ジェノス君の快気祝いとサイタマさんの昇級、それから私の帰還祝いを兼ねてお祝いをしようという話になった。
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せっかくだからと最寄りの居酒屋に来た私達はご馳走を前に滾っていた。
サイタマさんが生ビールのジョッキを気味良く仰ぐ。
「く〜!キンッキンに冷えてやがる!」
その光景を眺めながらつくね串を頬張る私は3つ目のつくねを口に入れる所だった。
「ユズは酒飲まないのか?」
ツマミをモグモグしながらサイタマさんが聞いてくる。
「いえ…飲めないというわけでは、ないんですけど…。」
バツが悪そうに呟く私には身に覚えがあった。
飲んだことはある。過去には歓迎会などで飲酒を断れない席もあったからだ。
ただ飲んだ時にもう飲まないと誓ったのだ。
「なんだ?酒乱か?」
何も気にしていないような素振りで淡々と焼き鳥を食べながら言うサイタマさんに目を泳がす。
「酒乱…というか、その、泣き上戸と…いうか…。」
歯切れ悪く言ったが、彼は「別にいいじゃん。」と簡単に言う。
「いや、違うんです…違わないんですけど、」
堪らずにトイレ行ってきます!と言って逃げる。
席に戻った時にはジェノス君との会話で盛りあがって忘れてますようにと祈って。
どうなるかは絶対に引かれるから、絶対に言いたくないのだ。
「まずは先生にお手本を見せて頂いて…!」
「お前そればっかじゃねーか!」
用を足して戻ると、願った通りジェノス君とヤンヤヤンヤ盛り上がっていた。