第3章 それから
「ウッ…ん、…?」
瞼を開けると殺風景なコンクリートに囲まれた室内だった。
立ち上がろうとしたが、腕が動かない。
見るとガチガチに縄で縛られていた。
通りで身体中が痛い訳だ。
口元にはガムテープが貼られ、喋ることも出来ない。
諦めて鼻からため息を吐く。
部屋の前で襲われたことを思い出して生きてた事を幸いに思う。
しかし何日気を失っていたのだろう。
仕事は?ジェノス君は?サイタマさんは?どうなっただろうか。
日常の心配をしていると足音が聞こえてくる。
鉄骨の建物はよく響く。それが更に不気味さを加速させていた。
「ようやくお目覚めか。」
現れたのはいつかの黒装束の男。
嘲笑うような目線を向けるその男を私は睨んだ。
「なんだ、サイタマが恋しいか?」
楽しそうにしている男の見当違いなセリフに呆れて力が抜ける。
痛いんだ、腕が。
____ドンッドンッ
「チッ、またか。」
痛む腕を解放したくて手をモジモジさせながら自力で縄を緩めようとしていると、外から音が聞こえてくる。
苛立つように武器を構えた男は再び建物の外へ消えていった。
『ぎゃあああ!!』
やがて外から断末魔が聞こえてきたかと思えば静寂が訪れ、足音が戻ってくる。
「お前は人質に取らせてもらった。」
こういうのをデジャヴと言うのか、先程と同じような嘲笑う顔で現れる。
「なんせお前は…」
____ドンドンドンッ
そして再び鳴り響く音。これもデジャヴ。
苛立つように出ていく男、
『ぎゃあああ!!』
聞こえる断末魔。
戻ってくる足音。
「なんせお前はサイタマの…」
____ドォォオオオン
『ぎゃあああ!!!』
人の血管の切れる音が聞こえたのは初めてだ。
無言で消えていった男は沢山怪人の体液を浴びて無言で帰ってきた。
息を乱した男は頬に付いた怪人の体液を袖で拭いながら
「お前を連れて来てからどうもおかしい。」
とこちらを睨みつけてくる。
あぁ……そうだった。
私は怪人に襲われやすい体質であった。