第1章 これまで
何気なくテレビを見ていると、ヒーロー協会やヒーローの名前は良く耳にするようになった。
最近は俳優やモデルをやってる人もいるようだ。
多分私が出会った怪人達も後々彼ら彼女らに倒されているのだろう。
あの白マントのヒーローもこの人達と同じ協会にいるのだろうか。
今度菓子折を持って正式にお礼に行こうかな、と悩んでいると、携帯の着信音が鳴る。
____ピッ
「もしもし」
「あっ、もしもし?ユズちゃん?ごめんねぇ、今日ってバイト入れたりする?」
「…大丈夫です。」
「助かる〜!田中さんが急に来れないって言うから、あたし言ったのよ、急な休みは困るって!そしたら…」
「今から向かいますね。」
「あっ、うん、よろしくね!」
パートのおばさんからの電話はよく長くなる。
悪い人じゃないけど、話は長い。
常にお金に困ってて、断らないから頼みやすいのか、突然の出勤はよくある。
今のバイトも会社の事を思うと、そんなに長くは続けられないから多少の我慢はする。
素早く服を着替えると、トートバッグに制服を詰めてテレビを消す。
消す前のテレビで昨日のことを報道していたような気がするが、消してしまったしもういいや。
履きなれた靴と狭く薄暗い玄関。
扉を開けて怪人が居ないか確認すると、足早にバイト先へ向かった。