第3章 それから
走ったせいで荒れた呼吸と、衝撃的なものを見たショックで喉からヒューヒュー音が鳴る。
「サイタマさ…そ、それは…ジェノっ…」
パニックになっている私を見てサイタマさんは慌てて近くへ来る。
「いやいや!落ち着けって!生きてるから!ほら!」
抱えた上半身だけのジェノス君を見せてくれるが、サイタマさんの動きに合わせて揺れるだけでぐったりと動かない。
「っ!死ん…!」
「死んでねーって!」
語気を強める彼に徐々に冷静になる。
整ってきた呼吸と頭で理解を深めていく。
そうか、ジェノス君はサイボーグだから…
「良かった…」
腰を抜かしたようにその場にへなへなと座り込んだ。
____ヴーン
それと同時に頭上から羽音を響かせてドローンがやってくる。
サイタマさんがそのドローンにボロボロのジェノス君を収めれば、ジェノス君は無言のまま回収されていった。
「ま、そのうち帰ってくんだろ。」
のっぺりとした口調に戻った彼が手を差し伸べてくれる。
その手を掴めば簡単に立ち上がらせてくれて、完全に平静を取り戻した私は静かに頷いた。
____
ピーポーピーポー
帰りの道中、サイレンを鳴らした救急車とすれ違う。
実を言うとこれで3台目だ。
「…怪我人結構いるんですか?」
救急車を目で追ってから隣を歩くサイタマさんに聞くと、思い出すように上を向きながら答える。
「あー、いたな。」
その返答を聞いて先程のジェノス君を思い出す。
ジェノス君があんな事になるんだから、生身の人間は…と勝手に想像して小さく身震いした。
同時にサイタマさんがいて本当に良かったと改めて思うのであった。