第2章 ここから
既に風呂から上がっていたサイタマさんがこちらを見て飄々とした様子で手を上げた。
いつもの場所に座るサイタマさんの机を挟んで向かいに腰掛ける。
「さっき帰ってきたんだって?」
聞いてくる彼、いつもの表情のはずが何故か視線が痛い。
じーっと見られて、やましい事は何も無いのだが反射的に目を逸らした。
「あの…ケーキを、買ってきました。」
耐えられなかった私は机の上に置いた袋をサイタマさんの方にずいと押し出した。
「3人で食べたいなと思って…。」
自然と正座になっていた自分。
意味もなく部屋の壁を見つめる。
その間サイタマさんは差し出された袋をガサガサと漁り、中身を黙って見ていた。
「ケーキを買って帰るまでの道のりはアスレチックにでもなってたのか?」
「……」
「俺ら結構心配したんだぞ。」
段々サイタマさんが怒っているのを理解していく。
気付けば自分の膝を見つめていて、子供のように小さくなっていた。
「…ごめんなさい。」
肩を落として謝ると、サイタマさんが吐息を小さく零す。
「ケーキ買いに行きたかったら俺達のどっちかに声掛けても良かっただろ。」
諭すように言ったサイタマさん。
それはそうだけど、そうじゃない。
自分の体質も忘れてひたすらに考えていた。
ただただ、私は
「喜ばせたかった…です。」
自信なさそうな小さい声で言うと、しばし沈黙が流れる。
何か言われるのを待って下を向く私の頭にポンッと何かが乗ったと思えば、ワシワシと火がつきそうなくらい擦られる。
髪が絡み、ある程度ボサボサになるまで擦られたかと思えば、ピタッと止まって終わった。
その行動の意図が気になり、サイタマさんを見上げると彼は一言
「バカだな、お前。」
といつもの顔で笑った。