第2章 ここから
走ってスーパーに戻れば助けを呼べるかもしれない。
自宅へ走るよりはスーパーの方が近い。
そうと決まれば、踵を返して間髪入れずに走り出す。
「逃げられるとでも?」
しかし走り出してすぐに怪人が繰り出したムチのような物でふくらはぎを叩かれてバランスを崩す。
盛大に転んだが、ケーキだけは潰さないよう守った。
ジリジリと迫り来る怪人に向き直って立ち上がり、また後退しながら逃げる隙を探す。
今日どうしてもケーキを食べたいんだ、3人で。
キッと怪人を睨みつけた時。
____ズシャアア
怪人の胸を何かが貫いた。
貫かれた怪人は後ろを振り返る事も出来ずに力なく倒れた。
倒れた怪人の向こうには人影がある。
そこに立つ人物は地面にある怪人の頭を容赦なく踏み潰した。
「汚いゴミが。」
冷たい声音が響く。
警戒を解いていいのか分からず、こちらに向かってくる人物に身構えた。
「大丈夫かい?もう平気だよ。」
近くまで来てようやく顔が見えると、そこには水色の髪をした中性的な顔立ちの男?がいた。
この顔どこかで…
「Z市の状態を確認しに来たら、ちょうど君が襲われているのが見えてね。」
間に合って良かったよ。と笑う彼だがどことなく安心ができない。
警戒を解かないまま、頭を下げて礼を言う。
「…君は…。」
すると彼はさらに近づいて来て手を伸ばしてくる。
何故か底知れぬ危機感を感じて、慌てて顔を伏せると捻り出した声で
「手、汚れてますよ。」
と言った。
「あ…あぁ、すまない。」
我に返った男は伸ばしていた手を引っ込めると、そのまま手を上げた。
「じゃあ、気をつけて帰るんだよ。」
そう言うと、ポケットに手を突っ込んで闇の中に消えて行った。
助けて貰っておいて失礼だっただろうか。
でも…
「……」
私は深く考えるのを辞めて、転がる怪人だったものを大きく避けると、再び家の方向へ急いだ。