第2章 ここから
次の日になっても仕事場から連絡が来ないので、状況確認にヒーロー協会を訪問した。
建物自体は無事であったものの、街の復旧作業や対応に忙しそうにしていてとても声を掛けられる状態では無かった。
何か手伝った方がいいかもしれないと清掃員の休憩室に行ってみると、先輩が1人だけ居た。
「ユズさん無事だったんだね。」
疲れたように椅子に深く腰を下ろしたまま言う先輩。
聞くところによると、働いている人の何人かは家が崩壊してしまっていて、しばらくは出てこられないという。
そうなると人が集まらないため、清掃の仕事も復旧が進むまではお休みになりそうだと。
少ししたら順番で私にも連絡するはずだったが、回線が混みあっていて中々電話が繋がらず、直接来てくれたので助かったと言っていた。
「せっかく来たし、配給のお水でも配りに行く?」
先輩がそんな提案をした。
怪人が出たら面倒だな…と思いながらも人の役に立てるかもしれないことを断りたくない。
ここに来るまでにも何人かのヒーローが復旧の手伝いをしている所を見かけたし、何とかしてくれるだろうと他力本願な事を考えて承諾した。
重い段ボール箱を台車に乗せ、ガタガタと道の悪い場所を丁寧に押していく。
「どうぞ…」
復旧作業で汗を流す人や、落ち込んだ様子で瓦礫の上に座り込む人、杖を着いた老人。
順番に見かけた人に水を配っているとどこからか民衆の騒ぐ声が聞こえた。
この先だ。
気になってそちらに向かおうと先輩に目配せするが、水を求める人に囲まれていて忙しそうなので置いて行くことにした。
ガコッガコッと細かい瓦礫を轢く度に台車がぐらついてコントロールが難しい。
なんとか騒ぎの起きている場所に辿り着くと、結構な人集りができていた。
一体何事かと騒ぎの中心を人の間から覗き込む。
「えぇ…。」
思わず声が出た。
中心にサイタマさんがポツンと立っていたのだ。