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私のヒーロー【ワンパンマン】

第2章 ここから




彼はえー…と

無免ライダーさんだ。


「助けて頂いてありがとうございました。」


お礼を言うと少し照れたように笑い、謙遜をしていた。

真面目で正義感の強いお手本のようなヒーローだ。


「君はヒーロー協会に用事かい?」


私が出てくるのを見たからか、不思議そうに言ってきた。

確かに一般人が来るような所では無いから不思議だろう。


「ここの清掃員として働くことになりました。」


当たり障りなくそう言うと嬉しそうにパッと空気が華やいだ。


「じゃあまたここに来れば…」


ぼそっと小さく呟いた言葉を上手く聞き取れなくて聞き返そうとすれば、彼は慌てて誤魔化した。


「いや、何でもない!君が無事で良かったよ!」


笑顔で言う彼のゴーグルの下にはガーゼが見えていて、こないだの怪人に殴られる姿を思い出した。

…なんか申し訳ないな。

いたたまれなくなり、バックから非常用で持っていた絆創膏を取り出した。

それを彼に渡す。


「次、怪我したら使ってください。」


その絆創膏を見たまま固まってしまった無免ライダーさん。

しばらくして我に返って絆創膏を受け取ってくれた。


「ありがとう、大切に使うよ。」


本当に嬉しそうに言うから、こちらまでむず痒くなってきた。

ちょっとした恥ずかしさを隠すために「それでは…」と一礼して逃げるように歩き出すと、彼が呼び止めてきて


「名前を、聞いてもいいかな。」


と言うので


「ユズです。」


と振り返って名乗ると軽くお辞儀をして再び歩き出した。


こういう時、いつまでも笑顔ひとつ浮かべられないのも問題である。

せっかく助けて貰っても感じが悪いと思われたらいけない。


せめて愛想笑いくらいできるようになろうと帰って練習することにした。
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