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私のヒーロー【ワンパンマン】

第2章 ここから



面接に受かったという知らせはそれから何日も後に届いた。

時間がかかった理由は応募人数が多かったという単純な理由だ。

なぜ私が選ばれたかといえば、人気のあるヒーローとお近づきになりたいという欲が感じられなかったからという、これまた単純な理由。

あとは無免ライダーのピンチを知らせてくれたからという理由もあるそうだ。

それに至っては申し訳なさの方が勝つが。

何にしても合格した私は晴れて清掃員としてヒーロー協会で働くこととなった。

今日は記念すべき出勤1日目。

気を引き締めて行ってきます。



「___で、これがそこで、あれがこうで。」


現地で制服に着替えた後、先輩清掃員の指示を聞きながらメモをとる。

先輩が何度も言うのは邪魔にならないようにという言葉。

それはそうだろうが、何故そんなに必死に言うのだろうか。


「いい、できるだけ気配を消して…黒子になるの。」


遠い目をしてそう言う先輩は何か辛いことがあったのだろう。

でも安心して欲しい。

私は気配を消すことだけは得意だ。


空気との融合、景色との調和。

今までの努力がこんな所で報われるとは。

説明を終えた先輩が自分の仕事を始めるのを確認すると、私も指示を受けた場所で床を拭き始める。

建物自体が物々しいビルだが、床も壁も不思議な材質に感じる。

特注素材なのだろうか。

初めての施設を観察をしながら出入りする人を見ていると、かなり強そうな人からサイボーグ、独特な格好をしている人など様々だ。


ヒーローが何人いてどんな人が活躍しているのかよく分からないが、少しは知っておいた方がいいのだろうか。


重要な施設がある階では、メカメカしいお掃除ロボットが清掃するので関係者以外は入れないとか。


実はとんでもない所で働いているような…


「ちょい、そこのお嬢さん。」


上手いこと気配を消していたと思ったが、声を掛けられて振り返ると1人の白髪のお爺さんがいた。


「見ない顔じゃが、新入りかね?」


少し腰の曲がった小柄なお爺さんは髭を触りながらそう聞いてきたため、私は静かに頷いた。

「今日からです。」

と言えば、お爺さんは興味津々に反応してくれる。
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