第2章 ここから
「強くなりたい。いや、強くならなければいけない。だからサイタマ先生に弟子入りしました。」
強い意志を持った瞳、その奥に潜む復讐で塗り固められた悲しみ、そんな簡単な感情では無いかもしれないがそれだけは汲み取れるような気がした。
「それでも…」
食器が乾いたのを見計らって熱風を止めた彼は、こちらへ向き直って見つめ合う。
「今日は楽しかったです。」
微笑んでいるとは言い難い。でも確実にジェノス君の表情が和らいだ気がして
「また3人で夕飯食べませんか。」
気付けば自らそんな風に誘っていた。
「お、いいな!」
先程までテレビに齧り付いていたサイタマさんがひょっこり顔を出すとあっさり賛成してくれて、それにより今後も機会を作ることになった。
3人揃っても表情の乏しい面々だが、利害の一致や同情を超えた何かが私を引き付けている。
友達、なれるかな。
そんな小さな期待が生まれる穏やかな時間であった。
「では、おやすみなさい。」
2人に挨拶をしてから自分の部屋に戻ると、今まで感じたことがない程に部屋が静かだった。
最近は感情が豊かになってきているように思う。
「…寂しい…か。」
情けない事に別れてすぐそんなことを呟くなんて。
すぐ消えてしまったそんな感情を胸に、さっさとお風呂に入って寝てしまうことにした。
また明日もある。
明日のために、もうおやすみ。