第2章 ここから
次の日の朝、出かける事をサイタマさん達に伝えておこうと部屋の前まで来ていた。
___コンコン
「はい。」
出てきたのはジェノス君。
「面接に行ってきます。」
彼にそう伝えると、奥からサイタマさんが駆け寄ってきた。
「面接?どこに?」
「ヒーロー協会です。」
何気なく名前を出したその瞬間、2人は驚いたように声を上げた。
目を見開いた2人を見て違う方向に考えてしまっていることを察した。
「まさかお前も…」
「違います、清掃業務ですよ。」
勘違いをしているようだったので、すぐに否定して求人雑誌を見せた。
それをサイタマさんは手に取ってじーっと眺めていたと思ったら、雑誌をパッと返してきて
「頑張れよ。」
と優しく言った。
ジェノス君は送っていきましょうか?とお節介焼きな一面を見せてくれたが、平気だよと一言断りを入れると快く送り出してくれる。
2人の視線を背に気合いを入れると、軽快な足取りでアパートを後にした。
「グヒヒヒッ」
後にしたのはいいが、辿り着く前に例によって怪人と出会った。
やっぱりジェノス君に着いてきてもらうべきだったかとも思ったが、まさかS級ヒーローを連れて面接に行くところを誰かに見られる訳にはいかない。
割と急いでいるし、どうしたものかと考えていると後方から猛スピードで近づいてくる自転車の音が聞こえた。
「ジャスティスクラーシュッ!!」
現れた緑のヘルメットを被った人は、器用に自転車を跳ねさせて怪人の顔面へヒットさせた。
倒れた怪人を押えながら自転車マンは
「俺が怪人を引き付けている内に行くんだ!!」
そう言って必死に戦ってくれていた。
互角に戦っている姿を見て、あまり放っておいていい気もしないが生憎今日は急いでいる。
彼はヒーローだろうか?お言葉に甘えて行ってしまってもいいのだろうか?
そんな風に悩んでいる間にも、自転車マンは苦戦を強いられ続けている。
すぐに人を呼ぼう。彼のヒーロー生命を絶たないためにも。
一所懸命に怪人と対峙する彼に一礼をして、ヒーロー協会の方まで走った。