第2章 ここから
何気ない一日、隣に住む彼らのおかげで優雅に求人を見ることができていた。
カーテンを開けて日差しを浴びながら、まともに部屋で過ごしたのは初めてかもしれない。
ペラペラと紙をめくる音と、隣から聞こえる生活音。
長らく人気のある場所から離れて住んでいた身としては全てが新鮮であった。
何枚かページをめくってある求人に目が止まる。
清掃業務、ヒーローに囲まれながらお仕事しませんか?
の文字。
一番下には太字でヒーロー協会Z市支部というロゴ。
自宅にいる間はサイタマさん達に守ってもらえても、職場まで来てもらう訳にはいかない。
働かなければ生活費は稼げないし、ヒーローの拠点で安全を確保しながら仕事もできるなんて一石二鳥ではないか。
早速乗っている電話番号に電話をしてみる。
____プルルル…ガチャ
「お電話ありがとうございます。こちらヒーロー協会Z市支部です。」
「あの、求人を見まして…」
「清掃の求人ですね!」
「はい。」
「それでは一度履歴書など記載の物をお持ちになって面接にいらしてください。日にちは明日など如何でしょうか?」
「大丈夫です、よろしくお願いします。」
「はい、お待ちしております!」
ツーツーツー……
優しそうな女性で良かった。
さて…そうと決まれば履歴書を用意しよう。
引き出しの中から束になった新しい履歴書と何枚もある証明写真を取り出す。
頻繁に職場を変えなければならなかった為、大量にストックしているのだ。
サラサラと記入を勧め、慣れた手つきで写真を貼る。
大体どこも書くことは同じだ。
完成した履歴書をファイルに入れて、求人雑誌に書いてある他の持ち物を確認していて、見落としていた米印を見つけた。
※必ず履歴書に好きなヒーロー名の記入をお願いします。
…好きなヒーロー名の記入?
そんなの書いてどうするのだろう。
とりあえずファイルから履歴書を取りだして、空いてるスペースにサイタマと書いておいた。
ヒーロー名とはこれでよいのか、よく分からないが再びファイルに戻して明日を待つことにした。