第2章 ここから
あの後サイタマさんのアパートへやってきた私は今後のことで話し合っていた。
このアパートへ住むことを提案したのは単に助けやすいという理由だけではなく、どうやらサイタマさんの事情に絡んでくるらしい。
なんでも最近流行りのヒーロー協会という所で、ヒーローとして正式に認定、登録されたようだ。
されてなかったんだという気持ちは置いておいて。
登録したはいいものの、現時点では定期的な活躍が無ければ簡単に除名されてしまうという。
もちろんサイタマさんはSきゅ「C級だよ。」
という不遇の対応を受けており、その為に課せられたノルマを難なく達成するのに思いついたのは、私が近くに居れば怪人の方からやってきてくれるというなんとも便利な仕組み。
ウィン・ウィンの関係という訳だ。
どうせこれまで住んでいたアパートはめちゃくちゃだし、住む場所と身の安全を確保できるのは正直ありがたい。
サイタマさんやジェノスさんは強いし、襲い来る怪人もノルマ達成の為なら彼らの迷惑にはならない。
ということで早速、サイタマさんの隣に生活空間を移すことで話は纏まり、サイタマさんの弟子になったというジェノスさんにも手伝ってもらいながら旧自宅の瓦礫の中から必要なものを掘り起こしていった。
運ぶ間ジェノスさんはサイタマさんがS級ではないことへの不満や強さについての自慢を延々と話しており、師弟愛を強く感じていた。(一方的な)
「ジェノス"さん"はよしましょう、お隣同士になるのですから。」
あらかた部屋のレイアウトが出来てきた頃、ジェノスさんがそんな事を言った。
話の途中で年下だと分かってから敬語も崩していたし、君付けでもいいのかなという気はしていた為、頷いていると玄関の方からズカズカとサイタマさんが歩いてきた。
「おい!お前!どさくさに紛れて何してんだ!」
目を三角にして怒るサイタマさんが、俺もだ!と敬語を辞めるように言ってきたが、彼は年上で何より命の恩人だ。
さん付けでなければ、呼び方は一つ。
「先生、になりますけど…」
「何でだよ!!」
かくして隣に引越しを終えた私は、サイタマさんとジェノスくんの2人とお隣さん生活を始めるのであった。