第1章 これまで
飲まず食わずで3日間は流石に経験がない。
別に仕事もないのだが、何となく無駄にした気分。
食費が浮いたと思えば悪くはないが。
それよりもよく怪人に襲われずに3日間寝過ごせたものだ。
ここ最近は連日襲われていたし、ジェノスさんが言っていた理由が本当ならば一日たりともゆっくりすることなど出来ないはずなのに。
思えば病院に入院している時もそうだ。
もしかして私の居場所がバレるには何かトリガーがあるのか?
分かれば大発見だがしばらく考えても思い当たることはなく。
誰かがたまたま都合よく倒してくれていた、ということだろうか。
少し気にしながら生活してみようと決めて、外出の準備をしようと服に手をかけて気付く。
そういえば洋服はそのままに寝てしまったんだった。
まずはシャワーを浴びることにした。
____キュッ
入浴中だろうと関係なく怪人が現れるため元々時間は短いが、シャワーだけだと更に早い。
冬なんて凍える程だ。
だけどもやはりお風呂は良い。
ベタつく体をサッパリさせて脱衣所で素早く着替えようとするが、どうやら上に着る服を部屋に忘れたらしい。
上半身は下着のまま部屋に戻ってタンスを漁っていると、ガチャっと玄関の開く音がした。
「おっ、開いた。って…」
開いた扉の向こうから現れたのは、丸い頭の男。
サイタマさんだった。
「…え?」
玄関から部屋はほぼ直通。
すなわち下着でタンスを漁る私とサイタマさんはバッチリ目が合ってしまったのであった。
「スマン!」
___バタンッ
「…」
勢い良く閉められたドアは心做しか歪みが治ったように見える。
私は再びタンスを漁り、適当なパーカーを引っ張り出して着替えた。
そしてドアを開けに行く。
「…どうぞ。」
外で頭を抱えるサイタマさんを部屋に招くと、顔色を伺うようにこちらを見てから目を逸らした。
「鍵かけるだろ、普通。」
気まずそうに呟く彼に「忘れてました」と言い返すと、信じられんと言わんばかりに眉をひそめた。
ノックをしてくれても良かったのでは?とも思ったが、まぁいい。
たかだか下着、裸では無いのだから。