第1章 これまで
やたらと趣味を強調する彼は気恥しいのか、たまたまだしな…とブツブツ呟きながら頬をかいている。
たまたまだとしても、命を何度も救われている。
ようやくしっかりお礼を言えたことに清々しさを感じていた。
「じゃ、気を付けろよ。」
サイタマさんは余程気まずいのか、そう言い放つとそさくさと歩き出した。
その方向を見て、自宅と同じ方向だと思いながら、私も歩を進める。
「…」
しばらく無言でサイタマさんの離れた後ろを歩いていると、様子をチラチラ伺ってた彼が鈍く振り向いた。
「なんで付いてくんの?」
「…?」
不審者を見るような目で見てくる彼に、ようやく理解する。
…ストーキングしてると思われてる?
「自宅、この方向です。」
変に疑われて気持ち悪がられるのは嫌なので、道の先を指さしながらそう言うと、彼はギョッとした表情を浮かべた。
「え、お前そんだけ怪人に襲われるのに危険区域に住んでんの…?」
「…どうせ襲われやすいなら、なるべく人が住んでいない所が良いと思ったので、」
サイタマさんが絶句してドン引きした後、歩幅を合わせてきた。
「…いつからそんな生活してんの」
「実を言うと、これは幼い頃からの体質で…」
それから家に着くまで色々な話をしながら歩いた。
怪人引き寄せ体質のことも、それによって起こる様々な弊害の数々、誰にも話したことの無いことを自然と話していた。
自分が無口であったのは、話しても仕方ないと言う諦めと、人に話せない事情が年を追うごとに増えて行ったからだと良く分かった。
気が付けば家の前まで時間を忘れて話し込んでいた。
「大変なんだな、色々。」
同情する目には不思議と嫌味がない。
「俺ん家、すぐそこだから。困ったら言ってこいよ。」
相変わらず目は死んでいるが、心無しか優しい表情でそう言うと、じゃ。と言って帰って行った。
友達、と呼ぶにはまだ早いが、知り合い、しかもヒーローの。
それが出来たことで小さく喜んでいる自分がいる事に私は気付いてない。