第1章 異世界転生
「ハメリアの思い人が、私を好き・・・?」
「子爵家の令息だそうだ。ハメリアの家は侯爵家。子爵家とは身分がと、縁談の申し入れをするのは却下したそうだよ。そんな時に、その相手がオフィーリアを思っていると聞いた様だね。」
「それで、私のあんな噂は流して嫌がらせを?」
「その事を含めて、お礼はしておいたから問題ないよ。」
「お礼ですか?」
どう尋ねても、直に分かるからと言って教えてはくれなかった。そして、私はこの時に購入した万年筆を父親にプレゼントした。
「これは本当に美しいな・・・使うのが勿体ない程だ。でも、折角オフィーリアからプレゼントされたんだ、大事に使わせて貰うよ。」
大絶賛である。一先ず、喜んでくれたのでホッとした。
それから数日後。
今日は、友人たちはそれぞれに役員会でお昼休みは私一人となった。いつものひっそりとした旧校舎裏にあるベンチで、刺繍でもと訪れていた。
うん、今日は誰もいないみたい。こっそり中を覗き込んで一安心。と言うのも、旧校舎のある一室はあの幼馴染とその取り巻きが宜しくやっている場所なのだ。今日は、使用していない様だ。
外のベンチに座り、慣れた様に縫い勧めていく。
そんな時、突如、人が現れた。見掛けない顔だ。
「あ、人がいたのか。驚かせてすまない。久しぶりにこっちに戻って来たから、色々と見回っていたんだ。ん?刺繍?随分、上手いんだな。」
「ありがとうございます。あの・・・顔色が悪い様ですけど、お加減でも悪いのですか?」
「あぁ、嫌・・・ちょっと、旅の疲れが取れないだけだ。お気遣い有難う。じゃあ、失礼するよ。」
来た道を戻ろうとしたその子息は、少し立ち眩みがしたのかその場にしゃがみ込んだ。
慌てて近付いたものの、相手は子息だ。無暗に触れていい相手ではない。
「あ、あの・・・良かったら、そのベンチで休まれた方が・・・。」
「・・・気遣わせすまない。そうだな・・・では、こうしよう。私も休ませて貰うし、キミもその刺繍の続きをする。どうだろう?」
余りにも優しく笑うから、私はその意志を尊重することにした。
「あぁ、私はルシアン=ベクサー。」
「ベクサー家って、あの公爵家の?」
「あぁ、そうだよ。それで、キミは?」
「オフィーリア=フィールです。」
「フィール家ってことは、伯爵家だね。」
「はい。」
