第1章 異世界転生
それでも、学園ではあの幼馴染エミリー=ヨークルート伯爵令嬢の周りには何人もの子息たちが囲んでいた。その中には、婚約者もいる子息もいてちょっとした騒動となっていた。
婚約者を蔑ろにしては、エミリーに良い顔をする子息。その一人がたまたま同じクラスで、人のいない教室で一人で泣いていた。どうやら、定番のエミリーに嫌がらせをされて、逆に婚約者から嫌がらせをしたのはお前の方だと言われたらしい。
「あの・・・大丈夫ですか?」
身体をビクつかせ、私たちを見たクラスメイトのネシア=アンバー子爵令嬢。
「フィール様、イシュア様・・・だ、大丈夫です。」
「心中、お察しします。」
「お相手の方、まだ思いを寄せているのですか?」
「そ、それは・・・。」
「しがらみがないのなら、婚約解消すればいいと思います。」
「こ、婚約解消?」
そんな事など、想像もしていなかったと言う顔だ。この世界の貴族の令嬢なら、そういうものなのだろう。
「アンバー様に、あの方は必要ですか?」
「・・・いえ、必要ありません。そう・・・ですね。お父様に話してみます。」
種を撒いた私たち。その結果は、思ったより早いものだった。晴々とした顔のアンバー様は、もっと早くこうしていれば良かったのだと笑っていた。
この時から仲良くなった私たち。この物語では、モブ的な存在。だからか、私は突如襲われたこの状況に唖然とするしかなかった。
今世の両親は、穏やかで心優しい人だと思っていた。嫌、そう勘違いしていただけなのかもしれない。
どうして・・・どうして、コレが私の元に?
普段は仕事が忙しい様で、あまり関わらない両親。それでも、アレキサンドリアの時とは違って、関わる時は優しい気遣いのある対応だった。
でも、本当は・・・そう思いたかっただけ?
「驚いただろう?相手は、公爵家の家柄だ。」
そう、今の私の手元には、前回も手にしたあの方の釣書だった。信じられないという顔で、今世の父親を見やれば何を誤解したのか私が喜んでいると思ったらしい。
「ご子息は、騎士団でも有望な人だ。将来も安泰だろう。・・・オフィーリア、どうかしたのかい?」
どうやら、私の顔色を見て異変に気付いた様だ。なので、私はこう切り出した。あの時と同じ言葉を・・・。