第1章 異世界転生
執務室のバルコニーに出たアレキサンドリアは、手摺に腰を掛けては満面の笑顔でこう言った。
「あんな男と結婚するくらいなら、死んだ方がマシ。さようなら。」
静かに外へと身体を預けたアレキサンドリアは、丁度、屋敷を訪ねて来た公爵家の子息の直ぐ傍で絶命した。死に際、確かにこう聞こえた。
「あんな男と・・・結婚するなら・・・死んだ方がマシ・・・。」
アレキサンドリアが絶命した後、この侯爵家では騒動となった。騒がしい声に気付いたのは、屋敷の直ぐ傍を馬車で移動していたある侯爵家の者。
たまたま、バルコニーからアレキサンドリアが飛び降りるのを偶然見ていた。馬車を止め、暫くその場で状況を伺っていたが、やがてその馬車は発車した。
そうして今・・・二度目の自称・神様とご対面したのである。
「ず、随分と早いお帰りですね。」
「貴方が、嘘つきだったからでしょう?」
笑顔でそう言えば、再び、謝罪と土下座である。
「知りませんでした。神様って、嘘をついても良かったんですね?あぁ、次も同じ事をしますか?ならば、ご対面するのは直ぐかもしれませんね?」
「も、申し訳ございませんでした。次は、ご期待に添える様に致しますのでお許しください。」
「そうですか。それが、真実なら有難いのですが。」
「本当ですっ!!」
あっ、面倒だったのか焦ったのか、再び、私は異世界で目覚める事となった。何故か、同じあのアニメの世界のある伯爵家の令嬢として。
今世の私は、アニメではモブ扱い。その事が分かって、ホッとした。普段から、大人しく控え目な令嬢らしい。
今の私には、友人もいてそれなりに楽しく学園生活を送れている。そんな友人たちとの会話の中で、アレキサンドリアの侯爵家の事も耳にした。
公爵家のあの子息との結婚が嫌で、自ら命を絶ったのだと。今までは我儘で褒められた性格では無かったけれど、そんなアレキサンドリアが嫌がる相手。今後の縁談に支障をきたしているそうだ。
そして、何故か箝口令が出たにも関わらず、正しく噂話しが出回っていた。あの幼馴染が嫌がらせをしていたと言う事と、あの方が恋慕している事を。
噂話しは、ごく一部で出回っていただけだったけれど、その話しを知った誰もが同じ学園に通うあの幼馴染と関わらなくなった。