第1章 異世界転生
今の私の名前や、家柄を聞いて間違いなく私の知っているアニメの世界なのだと分かった。そして、心の中で盛大に叫ぶ。
(自分の人生が自分で決められる様にって言ったのにっ!!)
我儘で傲慢で自意識過剰で意地悪で・・・誰からも、家族でさえもお手上げの存在であるアレキサンドリア。しかし、頭を打ってから人が変わったと知れ渡るのは、そう長くはなかった。
私がこの世界に来て二週間。
食事の時も一人。友人なんかは存在しない。部屋で大人しくしていた私に、今世の父親に呼び出された。そう、内容はアレキサンドリアの婚約の事だろう。
公爵家の次男との縁談だ。幼馴染に恋慕している子息だったが、当主の要望で意に沿わないが私と婚約をして半年後には結婚する。
その子息とは紆余曲折あるものの、物語的にはハッピーエンドになるお話しだ。だがしかし、物語的にはそうでも私はこんな男は御免である。
今の私は、自分の結婚は自分で決められる現代的な世界で生きて来たんだ。何と言われても、あんな男とは縁を結びたくなんてない。
執事のアランに執務室へと案内されて、アニメでも見た部屋へと入った。この時、初めて対面した今世の父親はアニメ通りに一枚の紙を私に寄越した。
内容なんて、見なくても分かる。
「何をしている。内容を確認しろ。もう、我儘が許される年齢じゃない。」
小さく溜め息を吐いた後、その紙を受け取り目を走らせた。内容は、想像通りのあの公爵家の子息の釣書だった。
「お前の縁談相手だ。そろそろ訪ねて来るだろうから、心して出迎えなさい。」
私は話しを切り出した。
「ご存知ですか?この方は、幼馴染でもあり実の兄の婚約者に恋慕している事を。その幼馴染もこの方の思いを知っていて自分から離れない様に、この方の縁談の話しが上がる度にお相手を虐め抜いた。この方は、お相手方の言い分など聞き入れず、幼馴染の言い分だけを信じた。私は何と言われようと、この方と結婚する気はありません。」
「我儘はいい加減にしろと言ったはずだ!!それに、環境は結婚すれば変わるものだ。」
「それまでは、虐められるのも誰からも信じて貰えない事も甘んじて受け入れろと?」
「貴族とはそういうものだ。大人しく公爵家に輿入れしろ。」
「フフ・・・ご冗談でしょう?私の事は私が決めます。」