第3章 確信
千明side
先輩の後ろをしばらく着いていくこと30分。
そろそろ俺も疲れてきた。
それに知らない場所だ。
この周辺の店も来た事がない。
まだ歩くのだろうか。
「あの、後どのくらい歩くんですか?」
ただ真っ直ぐ見つめて前をどんどん歩いていく先輩に尋ねる。
「もう着く。」
そう言って進んだ先は人気の無い場所で、周りに店はあるが営業しているのかすら怪しい佇まいをしている。
不気味な所で恐怖心が襲う。
一体ここに何の用だろうか。
先輩は4階建ての小さなビルの中へと入っていった。
入ってはいけない気がする。
「来てくれ、千明。」
浮気されたとはいえ、1度愛した人だ。
そんな風にお願いされると断り難い。
これで最後だ。
そう思い俺はビルの中へ足を踏み入れた。
中に入るとエレベーターに乗り、先輩が4階へのボタンを押した。
最上階だ。
「先輩、ここに何の用が?」
そう尋ねると先輩は振り向いて俺の両肩を掴んで、
「ごめん、千明。俺を助けてくれ。」
「え?」
その表情は何かに脅えている様だった。
こんな顔は初めて見る。
でも助けるって?
そう疑問に思っているとエレベーターの扉が開いた。
着いた先には刺青が腕に入ったイカつい男性が2人立っていた。
先輩の顔を見ると鼻で笑い奥の部屋へ通された。
「せ、先輩?」
俺は怖くて足取りが重くなった。
奥の部屋の扉が開く。
「本当に連れてきたのか。下衆が。」
中心奥に50代くらいの男性がタバコを加えて椅子に座っていた。
周りには沢山のイカつい格好をした男性。
逃げなきゃ。
脳が瞬時にそう判断し俺は入ってきた扉を開けようとドアノブに手をかけた。
「おいおい、どこ行くんだよ。」
「まだ用が済んでないだろ?」
逃げ道を2人の男性に塞がれた。
「俺は用なんてないです……」
「お前に無くてもこっちがあるんだよ。にしても……ほんとに地味だな?」
そう言って俺の顎を掴み顔をまじまじと見てくる。
力が強くて振り払えない。
「離せっ!いっ!」
そのまま先程のボスらしき人の前に投げられた。
床に勢いよく投げられた為全身を打ち痛くて動けない。
「こういう地味な奴で若いΩの方が売れるんだよ。」
売れる……?
売るって何を?
俺はこれから起こる事の恐怖と痛みで動けずにいた。