第3章 確信
響也side
「俺、ちょっと出かけてくる。遅くなるかもだから晩飯は適当にしててくれ。」
朝から三上は出かける準備をしていた。
いつもよりオシャレな格好をしていて、髪型もセットしている。
気の所為か顔も少し緊張している。
「……どこに行くんだ?」
別に放っておけばいいはずなのに聞いてしまう。
まるでデートにでも行く少女のように見えた。
俺には関係の無いことだとは頭でわかっているのに。
ただ昨日、三上が使っている部屋から電話をしているような声が聞こえてきたのだ。
『はい、明日のお昼からなら。……はい。ではまた。』
その声も今思い出せば俺と話す時よりもワントーン高かった気がする。
「……先輩に呼ばれてて…会って来るだけ。」
先輩とは恐らく元彼のことだろう。
まだ連絡が来ていたのか。
三上がクロに餌をあげ、頭を撫でている。
「じゃあ、今からバイトだから。先に出るぞ?」と俺に声をかけ立ち上がり玄関へ向かう。
俺はそんな三上の腕を掴んでいた。
体が勝手に動いていた。
「なに?」
三上が俺に掴まれた腕を見て首を傾げる。
離したくない。
行って欲しくない。
何故こんな事を思うのか。
俺はなんとなく自分の気持ちに察してきていた。
ただ認めたくないだけだ。
こいつは未成年で俺は大人。
絶対に交わってはいけない。
そう分かっていても体は勝手に動いてしまっている。
「……いや…何でもない。気をつけろよ。」
俺は離したくなかった腕をそっと離し、三上が家を出ていくのを見送った。