第2章 予感
千明side
先程まで忙しかった店内も急に落ち着き始めた。
先程から入ってくるお客さんを見るとずぶ濡れの人が多い。
雨が降り出したのだろうか。
そんなことを思っていると一瞬外が青白く光った。
その後3秒も経たずにゴロゴロと大きな音が鳴った。
雷か。
「兄ちゃん!タクシー頼めるー?」
「はい!ただいま!」
タクシーを呼んで欲しいと頼むお客さんも増えてきた。
ふと、外にいるクロの事が気になった。
怖がっていないだろうか。
一応屋根の下に居るもののびしょ濡れになっていないといいが。
「クロ大丈夫かねー?心配なら後で見に行っておいで。」
俺の思っていることが分かったのか、店長がお客さんに聞こえないように小声で話しかけてくれた。
「はい。」
ある程度お客さんが居なくなり、店も落ち着いてきたところで俺はクロのご飯を持って裏口から外に出た。
「クロー?」
いつもならすぐに返事をくれるが、全く鳴き声が聞こえなかった。
屋根の下まで地面はビシャビシャと濡れていた。
クロが入っている段ボールを覗く。
「……クロ?」
姿が無かった。
もしかして雷の音にビックリして逃げ出したのか?
だとしたら車に轢かれたりしてるかもしれない。
「そんな……」
俺は終業時間になるとすぐに店の周辺を探した。
まだ近くにいて隠れてるだけかもしれない。
俺は何度も名前を呼び店の周辺だけでなく、更に範囲を広げて探した。
そうしていくうちにいつの間にか家の前まで来ていた。
もうどのくらい時間が経っただろう。
携帯を見ると佐野から何度も電話が来ていた。
時刻は0時前。
とっくに補導される時間帯を過ぎていた。
あれから2時間以上経っていたのか。
結局見つからなかった。
別にペットという訳では無いのに凄く胸が苦しくなった。
一体どこに行ったのだろう。
まさか保健所に?
それともやっぱり車に?
そうやって考える度に辛くなってきた。
「……帰ろ…」
家の前まで来ていた俺は重い足を引き摺る様に帰った。