第2章 予感
響也side
街を巡回中、聞き覚えのある声が聴こえた。
「ははっ、おいクロやめろって!擽ったいだろ!」
子猫に顔を舐められている三上がいた。
楽しそうに笑っている。
捨て猫だろうか。
「もう少し待ってろ。飼い主見つけてやるからな。」
最近部屋でなにかコソコソやってるなとは思っていたが、あの子猫の飼い主を探していたのか。
動物も好きなのだろうか。
ただの捨て猫なのに。
子猫とじゃれ合う三上を見て、また鼓動が高まる。
ずっとあの笑顔を見ていたくなった。
「じゃあな。また後で来るからな。」
そう言うと店の中へ入っていってしまった。
猫か……優も一時期飼いたいと言っていたな。
子猫に近づくと俺に気づいたのか足元に寄ってきた。
指を差し出すとぺろぺろと舐める。
ペットか……
「お前、アイツのこと好きなのか?」
人間の言葉は通じないはずだが、答えるように一声鳴いた。
それがまるで「大好き」だと言っているようにも見えた。
思わず笑みが零れる。
「……俺も……っ」
俺も?
今俺は何を言おうとしたんだ?
『俺も___』
いや、そんな事ない。
未成年に……優以外のΩに……
俺が惚れるわけが無い。
これは何かの間違えだ。
ただ、錯覚しているだけだ。
そう言い聞かせ、交番に戻ろうとその場を立ち上がる。
「……また後でな。」
少し頭を冷やそうと遠回りをすることにした。
時間はかかるかもしれない道だが、たまには違う道を行くのもいいだろう。