第2章 予感
千明side
鳴り続けていた先輩からの電話が止み、少しほっとした。
今更何の用だろうか。
あんな一方的な別れ方をしたのに連絡が来るなんて思わなかった。
「そういえば今日学校に行ったんだな。」
「あーうん……退学考えてて先生と話してきた。」
そう告げると佐野は驚いた表情をした。
佐野はきっと俺が退学する事に反対なのだろう。
たったの1ヶ月だが、何となく佐野の性格が分かってきた。
これまでもずっと学校に行くことを勧めて来ていた。
「……どうしてだ?入学するのも難しい学校だろ?」
「元々行きたくて入学した訳じゃねぇんだよ。……父親の方の実家がちょっとな……。」
俺の父親の実家、つまり俺の祖父はIT企業の社長だ。
日本では知らない人は居ないであろうと言われるほど有名な会社だ。
それもあってか、幼い頃から学業や作法には厳しかった。
だが、祖父母は優しかった。
父には兄弟がいなかった為、俺はたった一人の孫として大切に育てられ可愛がられていた。
その分、跡継ぎとして期待されていた。
だが、それも俺が15歳になり行われた性別検査で全てが変わってしまった。
Ωだと結果が出た瞬間、祖父母も父親も人が変わったかのように俺への接し方を変えた。
「跡継ぎには相応しくない」「Ωなんてありえない」「優秀な血でないといけない」
Ωというものに対してへの嫌悪感と軽蔑するような言葉を俺の母に向けていた。
それからしばらくして母と父は離婚。
父は次の相手を探している。
それがあってか、俺は実家を見返したくなりこれまで以上に勉強に励んだ。
いい高校に入れば母も俺も認められるかもしれない。
そう思って必死に勉強をした。
だがそれはお門違いだったようだ。
どんなにいい高校に入れても、成績が優秀でも、俺がΩなことには変わりない。
俺のやった事は無駄だった。
だったらこの高校にいる意味もない。
高校で出会った先輩とも別れてしまった。
こんな事話した所で佐野は反応に困るだろうし……
「……俺の実家金持ちでさ……けどもう親離婚してるし……進学も考えていないし。別にいいかなって思って。……ご馳走様。先に寝るわ。」
詳しいことは話さずに部屋に戻った。