第1章 ヒーローとの出会い
千明side
唐突に別れを告げられ唖然とする。
何となくこうなることは分かっていた。
付き合って半年くらいで晃大先輩の態度が変わっていった。
それでも優しく抱いてくれるから俺も信じていた。
これがその人なりの愛情なのだろうと思っていた。
「はぁ……追い出されちゃった……はは、まじだせぇ……」
涙が出そうなのを上を見上げ流れ出ないようにした。
行く所が無くなってしまった。
貯金は少しずつしていた為部屋を借りることは出来そうだが、バイトもしていない今、俺が一人暮らしするのは厳しい。
この先どうするかな……
家に帰った所で俺の居場所はねぇし。
そうやって考え事をしているとどんどん気持ちが込み上げて来た。
ネックレスの様にして身に付けていたリングを握りしめる。
前に晃大先輩がお揃いで買ってくれた物だ。
指に付けるのは照れ臭いからと首から下げていた。
「……帰るぞ。」
「……でも俺家が……」
「俺の家があるだろ。早くしろ。」
そう言って響也さんは階段を下りていく。
俺の家って……
困惑している俺を無視してどんどん歩いていく。
俺も荷物を持って慌てて後を追った。