第6章 不穏
その日からは國神を避けるようになった。
芹澤からまた大量のノート運びを頼まれたときも
國「手伝うよ」
「大丈夫、本当に。1人でできるから」
断った。
餌やりのために國神が準備室に来た時も
「國神くん、もうやらなくて大丈夫だよ、私1人で」
國「なんで…」
「なんでも。今まで1人でやってきたんだし。國神くんはサッカーに集中して」
それから1週間ほど経った。
國神は意を決してメッセージを送った。
國『俺、なんかした?』
しばらくすると携帯が鳴った。
ピロンッ
國神はすぐに見た。
『別に何も』
しかしそこにあったのはこんな冷たい一言だけだった。
國神は頭を抱え、落ち込んだ。
一方でも落ち込んでいた。
ガラガラッ
準備室に誰かが入ってきた。
芹「浮かない表情ですね」
「芹澤先生…」
芹「何かあったんですか?」
「いえ…」
芹澤はフフと笑うとの前に温かいココアをおいた。
芹「皆さんには内緒ですよ」
は顔をあげるとお礼を言ってカップに手を添えた。
芹「ココアに含まれるテオブロミンという成分が血管を拡張させ血流が良くなります。結果体温が上昇し、心が落ち着きます」
「…なんでも知っていますね」
芹「曲がりなりにも生物学を教えるものですからね。知ってましたか?私は生物学の先生なんですよ」
「フフッ、危うく忘れるところでした」
芹「ようやく笑いましたね」
「少し元気が出ました。ありがとうございます」
芹「無理に何があったか聞き出したりはしませんが、何かあったらいつでも相談に乗りますよ」
「心強いです。ありがとうございます」
は芹澤の言葉で少し元気を取り戻したのだった。