第2章 離婚か風俗か
結局、誰と話をしていたのかわからないままだった。
数日して、
「野々花。大事な話がある」
と、改まった表情で、わたしの前に立った夫。
「そこに座って」
と、夫が、わたしがいつも座っている椅子を指さした。
わたしがそこに座ると、夫は自分がいつも座っている椅子に座った。
「いろいろ考えたのだけど、俺は、子供が欲しい。でも、不妊治療する金はない。親にも相談したけど、親も家のローンやら何やらで、俺の方の親は金がないって言っている。お前のところは、可能性があるのか?」
と、尋ねる夫。あるわけがない。あれば、悩むはずがない。わたしに原因があるのだから、真っ先に、それを私は考えたけど、無理。わたしが首を振ると、
「だよな。そうなると、子供は望めない。俺は、昔から言っているけど、たくさん子供が欲しいんだ。でも、野々花との子なら、一人でもいいと思う。でも、その一人でも、金が要る。手っ取り早く稼ぐなら、野々花が風俗で働くって言うのもありかなって思っているだが」
と、話す夫・・・。風俗?
風俗って・・・。キャバ嬢とか?大学時代に友人がキャバ嬢のアルバイトをしていたけど、そんなに稼げるという感じではなかったし、トークが必要という感じだった。
あの子は、わたしより美人だったし、歌も歌えたし、何より明るいし、トークもできて、面白いことを言って笑わすこともできた。
それでも、稼ぎは・・・。でも、するしかない?
「キャバ嬢とか?」
と、わたしが言うと、
「野々花にできる?」
夫の顔は無理だと言っている感じがした。
「無理かな?」
わたしが俯くと、
「無理だと思うよ。異性と話すのは、苦手だろ」
と、話す夫。そう、わたしは、男の人と話すのは苦手。夫は幼馴染だったから、話せたという感じ。