第9章 手
僕が泣きながら手を真っ赤にしておじいちゃん家に戻ってきた時は二人ともびっくりしただろう。
おじいちゃんはすぐに救急車を呼びに走り、おばあちゃんはすぐに僕を抱きしめた。
「怖かったねぇ、何があったんだい」
と聞いてきたが僕は泣いていたから答えられなかった。おばあちゃんの服やエプロンには、僕の赤で汚れてしまっていた。
「丁度いいところに白蛇様の泉があるからね、さ、おいで」
おばあちゃんは慣れた手つきで僕の手に泉の水をダバダバ掛けた。蛇に噛まれたあとがくっきりと残っていた。
「蛇に噛まれたのかい。嫌なことしたら蛇だって噛みついてくるんだよ……おっと、手を上げちゃいけないよ。今包帯持ってくるからね」
そうしておばあちゃんは、僕が噛まれた方の腕を軽く包帯で縛った。噛まれたのは手なのに不思議だなと思っていたけれど、これは血の流れを遅くしていたんだとあとになって知る。
それから救急車がやって来て、僕はどんな蛇に噛まれたのかって何度も聞かれた。僕は分かる限り答えたけど、毒蛇ではないということが分かってすぐにおじいちゃん家に帰ってきた。帰ってきた時には、お父さんとお母さんもいた。
僕はその後、家に帰るという話になったが、遅い時間だったからおじいちゃん家に一泊することになった。お父さんとお母さんと同じ部屋で布団を広げて寝たけれど、途中で何かが聞こえて僕は目が覚めた。
「おばあちゃん……?」
おじいちゃんとおばあちゃんは早起きだったから、どっちかが起きているのかと思った。僕は布団を出る。みんな寝ていた。