第8章 蛇
次の日。僕はおじいちゃんと一緒に敷地内の果樹園にいた。祖父母が管理している桃の果樹園だ。
桃はもう時期収穫を迎えようとしていて、おじいちゃんの手伝いをしている最中だった。桃に袋をつける作業だ。僕は下で袋を渡す係。それが終わると、果樹園内を自由に遊んでいいと言われているから、俄然やる気が出た。
「よし、今日はこれくらいだな」
合図はおじいちゃんのこの言葉だ。
「遊びに行ってもいい?」
「ああ、行っていいぞ」
「行ってきまーす!」
「桃の木は傷つけるんじゃないぞー!」
「はーい!」
僕は自分の体が弱いことを気にせずに走り回ったり虫を捕まえたりして遊ぶやんちゃっ子だった。今思えば泥に突っ込むなんて汚いが、この時の僕は全く気にしていなかったのだ。
そうして、おじいちゃんも家も見えなくなるくらい奥の果樹園までやって来た僕は、地面に紐みたいなものを見つけて立ち止まった。
よくよく見ると、紐が動いているのだ。
それがふっと顔を上げて、僕はすぐに神社のことを思い出した。白くはないが蛇がいたのだ。黒っぽい色をした。
「神社の蛇さんだ!」
僕は蛇が危険な生き物だということを知らなかった。僕は蛇を思い切り掴んだのだ。
「ぎゃあ!」