第7章 白蛇神社
かつて、ここよりずっと山の奥に、立派な神社があったらしい。
ある日、祖母のご先祖様の家が火事に遭い、寝泊まりする場所を失ったところを助けてくれたのが「白蛇を祀った神社」だったらしい。
ご先祖様は恩返しをしようと思い、家で育てていた桃を届けようとしたらその神社はどこにもなかった──という逸話があるのが、僕の家だけに伝えられている話なのだ。
「ふぅん……神社の人、お礼はいらなかったのかな?」
と僕が子どもの感想を言うと、おばあちゃんは外を眺めて首を振った。
「多分あの神社は、人には見えない神社だったのさ」
「見えない神社?」
そうなるとますます矛盾が生じてくる。この時の僕は大混乱だった。だったらなぜ、神社に助けられたのか。それともそれは、神社ではなかったのか? などなど。
だけどおばあちゃんは、腰がまた痛み始めたみたいでうめき出し、僕はそれ以上聞きはしなかった。そんなこともあるんだなぁと、この時の僕はすでにゲーム脳だったから、不思議な話も結構受け入れやすかったんだと思う。