第6章 白桃神社
「おばあちゃん、帰ってきたよ〜」
僕は貰ってきた水をおばあちゃんに渡す。おばあちゃんは腰痛のために布団の上で横になっていた。
「ありがとう、白蛇様も喜んでいるよ」
とおばあちゃんは言い、体を起こそうとした。僕は体を起こすのを手伝い、水を飲みたいと言うから湯のみを取ってきた。湯のみに入れた白蛇様の湧き水。どう見たってどこにでも見るような透明な水だ。僕は白蛇の泉の水と水道水の見分けがついていなかった。
「あの神社には、蛇が住んでいるの?」
当時の僕は、白蛇が神聖な生き物ということを知らなかった。それどころか僕は、神社の壁や装飾が白蛇なのは当たり前だと思っていたし、絵馬に馬が描かれているのが普通だと知った時はびっくりした程、僕の中での白蛇は日常的だったのだ。
「そうねぇ、住んでいるというよりは……」
東北の訛りが強いおばあちゃんの言葉を聞き取るのは結構大変だった。僕はおばあちゃんの言葉を待った。
「白蛇様のことを忘れないように神社を建てたのよ」とおばあちゃんは話し続ける。「そうだ、今度お前にも、本当の神社の場所を教えないとね」
「本当の神社の場所?」
この時の僕は、おばあちゃんからあんな話を聞いて本当に驚いた。
「白桃神社が元々はお墓だった話はしただろう?」とおばあちゃんは僕の方を見つめる。「本当はね、近くに白蛇神社があったんだよ。今はもう、この辺りにはないんだけどね」
おばあちゃんが言うにはこういうことらしい。