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あの日見た桃の思い出

第26章 目覚め


「白蛇様……」
 僕はそんなことを言いながら目を覚ました。オデコは汗でびっしょり。体を起こすと、物凄くダルいことに僕は気づいた。
 体が熱い。水を飲みたい、となんとか立ち上がると見覚えのある布団。これは……おばあちゃん家の布団?
 僕はフラフラしながら部屋を出て、やっぱりおばあちゃんの家だとだんだん頭がはっきりしてきた。
 僕は、夢を見ていたのだろうか。
 蛇に噛まれて包帯がグルグル巻きの手を見てみる。そこには杖もなければ、魔法球を巡る戦いをしていたと思うような跡は何一つない。何より僕は、あんなに走ったり転んだりしたのに土も足の怪我もなかったのだ。
 台所に向かうと、おばあちゃんが立っていた。そろそろ朝ごはんを作ろうと思っていてね、とおばあちゃんが言って僕を見た。
「おや、どうしたんだい、そんな顔して」
 僕がそんなに変な顔をしていたのか、おばあちゃんがそう聞いてきた。
 僕は、手を胸に当てた。
「僕、勇者になったんだ」
 僕は忘れない。いつまでも長い長い夜の世界で、不思議な蛇たちの勇者になったこと。
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