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あの日見た桃の思い出

第23章 走る


「白蛇様……」
 つい、そう呼んでしまう程神々しい何かが、白蛇を包んでいる。
 白蛇が、口を開いた。
「このような危険な目に遭わせて申し訳ございません、大原家のご子孫よ」
 僕は白蛇の鈴のような声に圧倒されながら、何度も首を振った。
「ううん、僕は何もしてないよ」
 なんなら足を引っ張っていたのに。
 だけど白蛇は、そんなことないと話を続けた。
「この領域は忘れ去られし夢の中。呼び込むには強い魂と神聖な存在の人間が必要だったのです」白蛇はまだ燃えている屋敷を振り返った。「数百年間、私たちはいつしか魔法の蛇、魔蛇となり、人の夢の形の一部となりました。しかしそれが争いを生み、人々の怨念が『お屋敷様』を作ったのです」
「神聖な存在……?」
 僕、そんなにすごかったのかな、と首を傾げていた。今でも、なぜ僕が蛇たちの勇者になったのか、謎は解明されていない。
「しかし、魔法球が壊れた今は、私たちは自由な身となりました。ありがとうございます」
 と白蛇が深々と頭を下げると、炎蛇と闇蛇が並んで僕に向かって一緒にお辞儀をした。僕はなんだか恥ずかしくなった。
「そんな、大したことじゃないし……」
 それでも、白蛇は微笑んでいて。
「ふふ、だから貴方を呼んだのです」そして、白蛇は向こうを見やった。「さて、そろそろこの世界は崩壊するでしょう。元々は人間自体入ってはいけない場所。神楽殿に入って、身を清める必要があります」
「カグラデン……?」
「こちらです」
 白蛇はどこかへと進んだ。その後ろを、炎蛇、闇蛇と続き、立ち尽くす僕に闇蛇が声を掛けてきた。
「おい、早くしろ」
「う、うん……!」
 僕は白蛇たちの後を追って、山を登った。
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