第22章 意志
「いいや、俺は残る」闇蛇は後ろを向いた。「白蛇がいるはずなんだ。俺は多分、白蛇を探さないといけない」
そうだった。闇蛇は白蛇を探している。僕がこの辺りを探しても、白い蛇なんて見かけなかった。
「じゃあ僕も……」
この期に及んで何を言うんだというところなんだけど、僕たちを阻む手はまだ止まってはいなかった。
「白蛇は渡さないぞ!」お屋敷様である。「俺は白蛇の夢を見て幸せになる! ついでに魔蛇の王になるのだ!!」
「ああ?!」目にも止まらない早さでお屋敷様を突き飛ばしたのは闇蛇だった。「幸せを魔蛇なんかに頼るんじゃねぇ! 自分でなんとかしろ!」
「うっ……」
お屋敷様は火の海の中で倒れた。動いてはいるが、戦う気力はもうなさそうだ。炎蛇がもう一度僕を呼ぶ。
「こっちです。まずは外に出ましょう」
「でも……」
僕は炎蛇から闇蛇へ振り向いた。炎蛇がそばにいないと、僕はこの火事に巻き込まれて大火傷どころでは済まないだろう。だけど、そこにいる闇蛇も放って置けない。闇蛇のお友達? の白蛇だって、どこかで助けを求めているのかも……。
「行こう、闇蛇さん!」
「は? だからお前は……っておい! 尻尾を掴むな!!」
僕は怒られる覚悟で闇蛇の尻尾を掴んで走った。僕はもう知っていた。闇蛇は噛んでこない。なんだか僕、闇蛇のことはずっと前から知っているような気がしているんだ。
だから、放って置けない。
僕は、闇蛇にどんなこと言われようとも絶対離さないまま、炎蛇のあとをついて走り続けた。