第21章 選択
「ほお、そういうことか」と呟き、お屋敷様は障子の向こうの人に言った。「連れてこい」
「はっ」
障子が開く。ジャラリと鎖の音がうるさい。畳の上に投げ出された彼らは、まるで物みたいにぞんざいに投げ出されたのを見て、僕は血の気が失せる感覚がした。
「……知り合いか?」
お屋敷様は聞いてきた。僕は、凍りついたような体に鞭を打って後ろに下がった。
「し、知らない」
僕はそう答えながら、鉄の棒が首に刺さったままの赤い蛇と黒い蛇から目が離せなかった。鉄の棒がそんな風に刺さっているのに血が出ていないのも奇妙だったが、何よりまだ、その蛇はどちらもわずかに動いていて生きているということが分かるのが恐怖だった。生きて……いるの……?
「お前に猶予を与えよう。なぜなら俺は、人間には寛大だからだ」お屋敷様は話し続ける。「どっちか選べ。選んだ方は、助けてやる」
「へ……」
声が掠れた。それは、どういうことなの?
僕は震えながらお屋敷様の目を見た。お屋敷様は、瀕死の蛇たちを前に、なぜか楽しそうだった。本当の悪人って、こんな顔をしているんだ。僕は全身に絶望感を抱いた。
「選ばなかった方は……どうなるの……?」
聞かなくてもいいのに、他に手段が思いつかない僕はそう口をついていた。お屋敷様は、自分の首に親指を突き出して横に真っ直ぐ振った。
「そりゃあ、極刑だ」
お屋敷様の言葉に、僕は息を飲んだ。僕は難読漢字にハマっていたから、どういう単語なのか知っていた。知っていたけど、知りたくなかった。
「どうした、小僧? どっちも知らない蛇なら、どっちを選んだってお前には関係ないだろう?」
お屋敷様が意地悪く笑った。
僕は、息を飲んだ。
「僕は……」グッと拳を握る。「関係ある!!」
僕は我武者羅にお屋敷様に突撃した。
不意打ちだったのだろう。お屋敷様は思ったよりよろけ、その隙に僕はそこにあるはずの丸い物を奪い取った。
「捕らえろ!」
お屋敷様がそう言い、蛇たちを連れてきた部下っぽい奴がすぐに僕に襲いかかってきた。僕は盗んだ魔法球を盾に目を閉じた。僕には戦闘能力なんて一つもなかったのだ。