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あの日見た桃の思い出

第21章 選択


「このガキ! 魔蛇の力で侵入したんだな! 魔蛇の仲間は人間だろうが有罪だ!」
「痛い痛い、痛いよ、おじさん!」
 僕はお屋敷様に乱暴に手首を引っ張られていた。僕が何度痛いと叫んでもお屋敷様は手を離さず、どこかの部屋に来ると押し飛ばされて僕は畳の上で転んだ。
 お屋敷様は懐に仕舞っていた魔法球を取り出した。僕の目の前でぶつかりそうになるくらい突き出して、お屋敷様は訊いてきた。
「これを盗んで何をしようとしていたんだ? ああ? ガキでもこれが高いもんだって分かるだろ? ほら、答えてみぃ!」
 僕は答えなかった。魔法蛇たちの……闇蛇や炎蛇の話をしたら、絶対なんかマズイことになる。それだけは、子どもの僕にでも分かった。
「ハンッ、子どもだからって黙って済むと思うなよ!」お屋敷様の言葉は続く。「さて、お前をどんな刑にしてやるか……考えるとしよう」
 そう言ってお屋敷様は低い机に向かい、パラパラと本のページを開き出した。僕は怖くて動けなかった。そして後悔した。僕、なんで闇蛇について行こうと思ったんだろう。
「お屋敷様」
 そこに、また障子の向こうから声がした。お屋敷様はイライラしていて、声を荒げた。
「なんだ! 今忙しいから後にしろ!!」
「……彼らを捕らえましたので」
 彼ら……?
 僕は、ドキリとした。
 それはお屋敷様にも見抜かれたみたいで、気味悪い程意地悪な笑みを浮かべて倒れたままの僕を見下ろした。
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