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あの日見た桃の思い出

第19章 侵入


「お前は串刺しの刑だ! 声の小さい魔法蛇が、どんな悲鳴を上げるのか楽しみだなぁ?」
 お屋敷様は、どうしようもない悪だ。
 だけど僕だって馬鹿じゃない。このまま突っ込んだら闇蛇との作戦は台無しだ。僕はグッと堪えた。話を聞く限り、今すぐ刑を行う訳ではないようだ。
 次に足音が聞こえ、僕は縁側を飛び下りて庭に出た。間もなく障子が開き、体が太った男の人が出てきた。
 その人は、かなり体はデカかったが、どう見ても人間に見えた。
 着ている服は派手で煌びやかで、あの人がお屋敷様なのではと思った。僕は念の為に庭の木の後ろに隠れていたけれど、魔法球はお屋敷様の近くにあると思ったから、こっそりついて行くことにした。お屋敷様は、透明人間の僕に気づく様子がない。炎蛇のことは気になったが、まずは魔法球を壊すことを優先しよう。
 魔法球を壊したら、魔法蛇たちを苦しめているあの特殊な金属から解放されるから。
 と、僕がこっそり後を追っていると、お屋敷様は、ある部屋に入って行った。外からではなんの部屋か分からない。障子を指で破って中を覗こうとしたら、そこに目玉があって僕はとうとう大声を出してしまった。
「わぁあ?!?!」
 僕はそのまま尻もちをつく。声が聞こえてしまったのか僕には分からないまま、障子が開いた。お屋敷様がじっとこちらを見下ろしたかと思えば、右左を見てキョロキョロした。
「誰だ! 誰かいるのか!」
 こんな目の前にいるのに、お屋敷様は僕のことが見えていないみたいだ。ならば今の内だ。僕はお屋敷様にぶつからないように、部屋の中に侵入した。
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