第18章 魔法
炎蛇が体から火を放つように、闇蛇の魔法は「音もなく破壊する」という魔法使いだった。
お屋敷の壁を闇蛇の尻尾でつつくと、音もなく穴を空けて簡単に中に入れたのだ。
ただ、闇蛇でも壊せない建物のところもあり、近くを探索したところ、それは敷地内で一番大きな建物だということが分かった。
「とにかくこっちに入れ」
と言われた通り、僕は建物の下に潜り込んだ。僕は四つん這いで建物の下を宛もなく進んだ。
「今から白蛇を助けに行く」そこでようやく、闇蛇は誰を助けに行くか話してくれた。「白蛇は吉夢の存在だ。屋敷の主が、白蛇の力が欲しくて自分の寝床のそばで捕まえているんだろうな」
「そんなことして、本当にいい夢が見れるの?」
僕は小声で訊いてみた。蛇たちの声は最初に聞いた時から、小さくて聞き取りづらいのだ。見回りには気づかれにくいだろうが、そうなると魔法蛇って、いつ大声を出すんだろうとかどうでもいいことを考えてしまう。
そんな僕の疑問に気づいたのか、闇蛇は疑うようにこっちを見上げた。ボーッとするな、集中しろ。そうして僕は、白蛇を捕まえたことでいい夢が見られるのかどうなのか、最後まで聞くことが出来なくなってしまった。
「これから床に穴を空ける。出来るだけ誰もいないところから空けるが、どんだけのアイツらが俺たちを襲ってくるのか分からねぇ」と闇蛇は話し続ける。「本当は魔法球さえ見つけて可動を止められりゃあどこでも壊せるんだがな。無理そうならここに戻ってこい。ここに俺の隠れ煙を置いとく」
「隠れ煙?」
「お前、どうして人間の子どもがこんな敵のど真ん中に来られたと思ってんだ?」
「え……?」
闇蛇が僕の足元を目で指した。見ると僕の影が変な風にユラユラしていて、一瞬お化けかと思ってしまって声が出そうになった。