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あの日見た桃の思い出

第15章 裁き


 炎蛇の言葉は小難しい単語ばかりで僕は首を傾げるばかりだったけど、質問を繰り返している内にだんだん砕いて説明をしてくれた。
 魔法蛇は昔から、人間の夢の中に出てくる神聖な生き物として大事にされていた。だが、魔法蛇は時として悪い意味の夢となって現れる。それは人間を思ってこその行動だったが、それを嫌う人間もいた。だからあのお屋敷の人間は魔法蛇を集めて、正しいことをしたかしなかったか振り分けているらしい。
「でも、魔法が使えるなら、あんなところに行かなくてもいいのに」
 と僕が言うと、炎蛇は頭をわずかに下げた。
「私たちを捕らえていた牢屋の鉄格子があったでしょう? あの鉄に見える金属には特殊な加工がされていて、私たち魔法蛇が呼び寄せられるのです」
「呼び寄せ……」
 まるで漫画みたいな世界だ。だけど漫画みたいな世界の裏側が、こんなことになっていたなんて知りたくはなかった。
「そこにいるのは誰だ!」
 声が飛び込み、僕の肩は飛び上がった。ガサガサと周りの草むらが忙しなく騒ぐ。僕たちの周りには、体が人間で顔は蛇みたいなアイツらが複数人で囲んでいたのだ。
「逃げましょう。少しの間、伏せていて……」
 炎蛇が小声で僕に言う。僕は言われた通り身を屈めたが、闇蛇がいつの間にか近くにいない!
 と僕が気づいた瞬間、炎蛇の体から赤い火が噴き出した。一瞬、花火にも見えたそれは、しかし突如現れた鉄の棒に阻まれてしまった。
「抵抗をするな、炎蛇!」炎蛇は、鉄の棒に首を押さえつけられていた。「毎度毎度火事の悪夢を見せつける悪の蛇が! これ以上罪を重ねるというのか!」
「やめろ!」
「なっ、なんだこのガキ!」
 僕は考えるより先に、体が動いていた。僕は化け物に体当たりし、その隙に炎蛇はどこかへ逃げ出した。けれども僕はもう一人の化け物に呆気なく捕まってしまった。やめろと暴れても、僕の体の何倍もある化け物に全然力が敵わなかった。
 僕は暴れ続けながら、あのお屋敷に連れて行かれてしまった……。
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