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あの日見た桃の思い出

第11章 出会い


「ハッハッハッ、人間を恨んでいるんだろう?」
「しかし、彼は私を助けてくれると言ったのです」
 黒い蛇の迫力のある渋い声とは違い、赤い蛇の声は静かで穏やかだった。僕は勇気を持って、黒い蛇に話を聞くことにしたのだ。
「倉庫ってどこにあるの? 教えてくれたら、君も助けてあげる」
 しかし黒い蛇は、フンッと態度悪く横を向いた。
「倉庫くらい自分で探せない奴に、俺らを助けるなんて無理だ」
 どうしてなのか分からないけど、黒い蛇が倉庫の場所を教えてくれないことだけは分かった。黒い蛇みたいな奴、ゲームの中でも見たことあるぞ。お前、魔王ってやつだろ。
 僕は赤い蛇の方を見た。
「僕、鍵を探してくるよ」
 赤い蛇はびっくりしているような顔をしていたけど、黒い蛇に煽られたのもあり、僕の気持ちは大きくなっていた。僕は黒い蛇みたいに嫌な奴なんかじゃない。僕は、勇者になるんだ。
 牢屋から出ると、他の建物の影からチラチラと明かりが光っているのが見えた。誰か見回りがいるんだ。僕は息を殺して静かに歩く。牢屋の隣に、もう一つ同じような造りの建物があったから僕はそっちに向かった。
 隣の小屋は、なぜか少し開いていて簡単に入れた。中には箱やらツボやら沢山置いてあって、少し高いところには鎖と手錠がぶら下がっていた。
(蛇たちを捕まえてる鎖だ……)
 と僕は思った。ここの誰かはどうして蛇を捕まえているのだろう。蛇は噛みついてきて強い感じなのに。
 そうこうと考えている内に、キラリと光るものを見つけた。壁に打ち込んだ釘にぶら下がっている鍵の束だ。
 僕は箱を押し寄せてよじ登り、鍵を全部取った。箱を動かすカラクリは、ゲームの中でもやったことがあるから簡単だ。
 僕は同じくこっそり歩いて、牢屋に戻って行った。
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