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あの日見た桃の思い出

第11章 出会い


 奥のオリまで来ると、ぐったりしている赤い蛇がいた。僕を見つけるなり、先程の人間様ですか? って聞くから、僕は名前を名乗る。僕は「人間様」って名前じゃないからね。そして次に赤い蛇はボソッと呟いたのだ。
「まさか人間の子どもがここにいるなんて……」
 それを聞いて、やっぱり子どもの僕が来てはいけない場所だったんだと知った。僕は早く帰らなきゃと思った。
「僕、お家に帰りたいんだ。おばあちゃん家が近くにあるはず」
 そこには、お父さんもお母さんもいるから、おばあちゃん家まで行ったら帰れるはず。僕はそう思った。
「尽力しましょう。まずは私をここから助けて欲しいのです」
 と赤い蛇は言い、僕はなんとかオリを開けようとしたけれど、鍵が掛かっていてビクともしない。叩いて壊せる程のものでもなさそうだし、僕は困った。
「鍵があるはずです。どこかにありませんか?」
「うーん……」
 僕はオリから離れて周りをキョロキョロするが、不規則に並ぶ松明の明かりしかない牢屋は暗かったし、鍵がありそうな場所は近くにはなかった。
「鍵は倉庫の方にある」
 と声が聞こえたのは後ろから。僕が振り向くと、暗がりと同じくらい黒い蛇が、鎖に繋がれたままこっちを見上げていたのだ。
「こんにちは……こんばんは? 黒い蛇さん」
 僕が黒い蛇のオリの方へ近づこうとすると、赤い蛇が声を上げた。
「いけません。ソイツは闇蛇です。迂闊に近づくと噛みつきます」
「えっ」
 僕はすぐに引き下がった。けれども黒い蛇は、ケラケラ笑うだけだった。
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