第1章 プロローグ

「あ、そうだ。苺花、相澤先生、絶対タイプでしょ？」

梨花がそう言いながら、にやりと笑う。その言葉に私は首を傾げた。

「相澤先生？」

名前に聞き覚えがなくて、戸惑いながら聞き返す。まだ物語の序盤しか読んでいないので、そんなキャラクターは出てきていなかった。

「あ、まだ出てきてなかったか。ごめんごめん。相澤消太って名前のプロヒーローで、主人公のクラスの担任！見た目怖いし無愛想だけど、めっちゃ生徒思いの先生なんだよ。絶対好きになると思う！」

梨花はそう言うと、スマホを取り出して「ヒロアカ　　相澤先生」で検索を始めた。そして満足そうにスマホの画面をこちらに向けてきた。

「これ、相澤先生。ほら、見てみて！」

梨花のスマホ画面に映し出された相澤先生の写真を、私はまじまじと見つめる。ボサボサの長髪、無精髭、眠たそうな眼差しーーどこをどう見ても、第一印象は「近寄りがたそう」な雰囲気。

だけど、どことなく漂うクールさと、意外と整った顔立ちに心を惹かれる。

タイプかもしれない……

そう思った瞬間、梨花が「でしょ！」と言わんばかりに満面の笑みを浮かべる。

「最初は不愛想な怖い人に見えるんだけどね、どんどん読み進めていくと、実はめっちゃ生徒想いだってわかるんだよ！」

「そうなんだ。相澤先生出てくるの楽しみかも」