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深淵もまた覗く[dzl]

第5章 見抜け!


「早くしないとまたハプニングが来ますよ!」
 と三人目のMENが僕の後ろでそう言ってきた。僕は注意深く三人を観察する。
 まず、最初のMENは明らかに表情が違うから偽物だ。今は普通に見えるけど、さっきとんでもない笑い方していたし。
 次にツルを燃やしたあのMEN。確かにMENはよく火打ち石を持ち歩いているイメージはあるけど、本物かどうかは分からない。
 そして三人目は僕の真後ろにいるMEN。あとから来るヒーローって言葉もあるけど、今のところ判断材料がない。
 だとしたら、僕は……。
「一旦逃げる!」
 もし本物が一人しかいないのなら、残り二人の偽物に僕は何かしらされるということだ。最悪三人が偽物だったら……そう思い、僕はこの場から離れることを優先したかったが、世界は赦さなかった。
 ドッ……!
 突然足元の感覚が消える。ゲーム内でもゾッとする瞬間。生身の僕が耐えられるとでも?
 僕の足元の地面が一気に消えたのだ。本当にどこへともなく、いきなり。
 なくなった地面の一番下は奈落の底になっていて、某ゲームでは「ゲームオーバー」を指していた。下から上へスクロールする視界には妙にリアルめいた地層がはっきりと見える。僕は精一杯腕を伸ばした。なんとか地面を掴んだ。
「大丈夫っすか!」
 本物かどうか分からないMENが僕の真上にやって来ていた。もはや何番目のMENだったか分からない。だがそのMENは、迷わず僕の手首を掴んだ。今助けますからね、そう言って。
「おい、助けてどうする!」
 そこにもう一人のMEN。僕を助けようとしていたMENを跳ね飛ばし、僕に向かってニヤリと笑った。これで終わりっすね。MENの声で薄気味悪く笑う。これ、MENじゃないよな……?
「本物のMENはどこにいるんだよ……っ!」
 必死の思いで偽物っぽいMENをもう片方の腕で振り払うが、状況は変わらない。僕は真下が奈落の穴の隅で、片腕だけでぶら下がっている。またどっちかのMENが覗き込む。
「俺の手を掴んで下さい、ドズルさん!」
「いいや、俺の手を!」
 こんな状況だというのに、二人のMENはどっちが僕を助けるかで争っている。僕はどこかで、ここには本物のMENはいないんじゃないかとそう思っていた。このどちらかの手を取ったら、ますますマズイ状況になるかもしれない、とも。
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