第26章 回答
「リスの満月はない……スクワロルムーンは聞いたことがない」
スクワロル。リスを英語読みした時の言い方だ。オオカミムーン、スノームーン、ワームムーン……全部英語読みにした時に少しずつ思い出したのである。そうだ、そんな名前だったな、満月の名前って。
「スクワロル……?」
「確か、リスを英語にした読み方だよ」
「へぇ、そうなんや」
おらふくんの解説はおんりーがしてくれたみたいだ。あ、今度おらリッシュ企画の時は、リスは英語読みで書くのだろうか。なんだかこのタイミングで次が楽しみになって、僕はちょっとだけワクワクした。
「満月が一ヶ月ごとに来るのは知ってたけど、名前があることまでは知らなかったなぁ」
とぼんさんは呟き、俺もです、とMENも頷いてからチョウザメへ目を向けた。
「まさか、チョウザメムーンもあるってこと……?」
「ハハハッ、確かチョウザメはもっと違う英語だったと思うよ。なんか、ジョーンズみたいな」
「それって映画の……」
「あ! ゲートが変な色になった!」
MENと会話しているところに、ぼんさんの大きな声。見るとリスがいたはずのゲートは何もないゲートになっていて、どこかに繋がっていそうな真っ黒な薄い膜が張られていたのだ。まるで某ゲームの四角いゲートみたいである。
「ネザゲみたいだけど、真っ黒……」
僕は思わず呟いた。こんなの現実じゃないと思うけど、足が勝手に竦んでしまう。
四人は、何も言わないまま僕を振り向いた。そうか。ここは最初から僕の夢の中だったんだ。最初を踏み出すのも、僕だということなのだろう。
「行こうか」
僕が進むと、仲間が後ろからついて来る気配がした。今の僕は一人ではない、という安心感がどうしても僕自身を心強くしている。大丈夫。何があっても、僕は。僕たちは。
真っ黒なゲートの中へ、足を踏み込んだ──。