第22章 対面
その言葉に、僅かな希望を抱いた。今ならまだ、思い出せるのかも。僕は、更に言葉を続けようとした。
「うっ……!」
「ぼんさん?!」
ぼんさんがいきなり、頭を抱えて倒れ出した。僕は飛び上がってすぐに介抱するが、症状が軽くなる様子はない。どうしたんですか、ぼんさん! と必死に問いかけると絞り出すように一言「頭が痛い」と言い始めたのだ。
頭……。確か彼は、偏頭痛持ちだったはずだ。それにここは訳の分からない世界で僕たちのことを忘れている記憶障がいが生じているのなら、早めに対処しなくては、取り返しのつかないことになるかもしれない。
「ぼんさん、薬とかないんですか?」
「そこ、に……」
僕の問いに、ぼんさんはなんとかどこかを指さした。その先にはカバンが。ぼんさんが時々使っていたカバンだ。
「開けますよ?」
と許可は訊いたものの、痛みにうめいているぼんさんに聞こえたかどうかは分からない。僕は急いでカバンを開ける。と同時に、あり得ない量の薬がバラバラと飛び出してきて、ぼんさんどんだけ薬を持っていたんだともう一度顔を上げた時に気づいた。
そこは、もう僕たちがいた楽屋でもなんでもなくなっていたのだ。虹と呼ぶにはあまりにも不気味な程暗く、歪んだ世界にいたのだ。