第22章 対面
トントン。
「はーい、どぞ〜」
ノックをすると、いつもの気の抜けた声が聞こえてきた。僕は物陰に隠れているおんりー、おらふくん、MENを振り向く。どうやらぼんさんに会うのは、僕一人に任されたみたいだ。
「入りますよ、ぼんさん」
僕は出来るだけ普段通りの声で断りを入れて扉を開けた。シンプルな白壁とやたら眩しい蛍光灯の部屋に、彼はいた。
「ちょっと待ってね……モグモグ……今日朝から食ってなくて」
なんて呑気なのか、ぼんさんはコンビニかどこかの弁当を掻き込んでいた。一切僕の方は見ない。ここで怪しい侵入者だったらぼんさん絶対刺されている。
「ここ座りますね、ぼんさん」
「はーい」
僕はぼんさんから真正面の椅子に腰を下ろした。彼はそれでも、顔を上げなかった。
僕は目の前のテーブルに両肘を置いた。
「いきなり本題でいいですか」
「え、何」
さすがに僕の真剣さが伝わったみたいで、ぼんさんはようやく顔を上げる。予想通りの反応。僕を初めて見る顔だ。目を見開いた。
「え、誰だれ?! 警備員さんは? 誰なの?!」
と言いながら立ち上がるぼんさん。まだ食べかけの弁当をしっかり持ち上げて、だ。誰がぼんさんの食いかけを奪うというのか。それとも彼の食い意地はこの世界でも反映されているのだろうか。
「僕のこと、覚えていないですか? ぼんさん」
「え……」
僕の問いかけに、当然という反応をするぼんさん。それからぼんさんはゆっくりと席に座り直し、弁当を置いた。
「知り合いだったらごめん。俺、忘れっぽくてさぁ」
と言ってぼんさんはサングラス越しに僕をじっと見つめた。僕も黙って見つめ返す。ぼんさんが二度、瞬きをした。
「いや……やっぱどこかで会ったことある……?」