第21章 分岐
関係者用通路は、やはりというか通行止めだった。おらふくんとMENが、行く手を阻む警備員さんに問い詰めているが結果は同じ様子。僕は考えた。
「……ドズさん、悩んでます?」
と声を掛けてきたのはおんりーだった。みんな気遣い上手ではあるが、おんりーは特にその能力が高いと思う。僕の不安に、少しでも気づいたのかもしれない。
「ここが本当の世界じゃないって分かっててもね……さすがに、キツイよ」
それはぼんさんの時だけではない。おんりーやおらふくんの時だって迷ったし悩んだ。MENは……最初だったし、勢いだったけどさ。それでも、悩むものは悩むよ。
選択を間違えたら、二度と会えないのか? と思うと。
僕はまだ警備員に突っかかっているおらふくんとMENを見、おんりーを見やった。おんりーは何も言わずに見つめ返し、それから二人の方に向かって警備員に何か話し掛けに行った。
何人行っても同じことだろうけど……と思っていると、おんりーが警備員に何か見せた途端、どうぞと道を通されたのだ。おらふくんとMENは驚いていたが、おんりーが僕にだけ見えるようにこっそり何かを見せてくれた。
「拾ったんですよ」
と口パクで言いながら、誰かの落し物であろう社員証を。
ということで、誰に似たのか卑怯なおんりーのおかげで、僕たちは関係者用通路を通ることが許された。向かうのはもちろん、ぼんさんの楽屋だ。